Column.ヴィーガンファッション講座「どうしていけないのレザー?」
カバンや靴、アクセサリーなど、私たちが日常的に身につけるファッションアイテムのあちこちに使用されているレザー。
レザーは、原料や製造工程の違いによっていくつかの種類に分けられ、そのそれぞれに利点と欠点があります。消費者として、動物倫理や環境問題に配慮しながらより良い製品選びを行うために、レザーを取り巻く課題について学んでいきましょう。
レザーとは?
レザーとは一般に、動物の皮を薬品等で加工したものを指します。皮革(ひかく)とも呼ばれ、耐久性に優れた素材の一つとして様々な製品に利用されています。(※生きた動物の皮→皮、それを加工したもの→革)
人類とレザーの歴史は古く、今からおよそ2万年前には人は狩猟で得た動物の皮を加工して、防寒用の衣服として活用していました。アメリカの先住民であるインディアン(ネイティブ・アメリカン)が民族衣装の一部として上着にレザーのポンチョを纏っていたことからも、レザー加工には長い歴史があることがわかります。
日本には、飛鳥時代までにレザー加工の技術が大陸から伝わったと言われており、その後江戸時代には火縄銃の弾薬入れに、明治時代の文明開化期には草履や下駄に代わる革靴に、レザーが用いられるようになりました。そして、ファッションとして大衆に広く慕われる素材となったのは戦後の高度経済成長期とされています。
レザーはどのように作られているの?
レザーの種類と加工の方法とについて、こちらの記事で詳しくご紹介していますが、ここではそのポイントを簡単にご紹介します。
レザーの加工において欠かせないのが「なめし」の工程です。動物から取った皮はもともと動物の皮膚であり、そのままでは腐りやすく製品に加工することができません。そこで、皮を水や薬品に漬けて汚れを落としたり、着色や乾燥をしたりします。このなめしの工程を経ることで、製品に加工できる素材としての革が生まれます。
世界規模で見ると、塩基性硫酸クロムを主成分とした薬品に漬けて加工する「クロムなめし」が全体の8割と一般的で、それによって製造されるレザーを「クロムレザー」と呼んでいます。
日本のレザー産業の現状
経済産業省が公表している「経済産業省生産動態統計」をもとに日本皮革産業連合会がまとめた、国内のレザー生産の概況によると、2012年から2020年までの8年間で、牛や豚を由来とするクロム甲革の生産量は減少傾向にあるようです。
実際、同データでは、2012年1月〜6月のクロムレザー生産量が約100万枚であったのに対し、2016年同月間では約74万枚、そして2020年同月間には約36万枚までその生産量が減っていることを示しています。また、レザーの貿易額も生産量と同様に減少の推移をみせています。
しかし、その一方で「原皮及び皮革」の輸入総額はかなり増加傾向にあるようです。環境負荷の高い製法で劣悪な労働環境下で大量生産された安価なレザーが流通しているという現状。いくら国内の工房で加工されているからと言っても、素材の出どころという点ではしっかりと確認が必要です。
レザー産業が抱える課題
国内では年々その生産量が減り続けているレザーですが、その背景にはいくつかの課題があります。
通常、レザーの製造には食肉として加工された動物の皮が用いられています。そのため、食肉の消費量が増えれば、必然的にそこから出る動物の皮の原料も多く発生します。(日本ではその大半を輸入でまかなっている現状ですが、、)
また、多くの食肉が消費されている現代社会では、コストを最小限に抑えつつ生産を最大化することを意図した集約畜産または工業的畜産と呼ばれる方法でせ家畜として生産され出荷されています。
家畜として生産されている限り、レザーはその「副産物」という観点もありますが、二酸化炭素排出などの環境負荷や動物倫理的な観点やからレザーの使用に対して違和感を覚える人も少なくないでしょう。
環境負荷の面での課題
温暖化の直接的な原因の一つとされている温室効果ガス。実は、牛やヒツジなど家畜のゲップから放出されるメタンガスが地球の平均気温上昇に拍車をかけているとも言われているのです。そこで温暖化を食い止めるための方策の一つとして食肉の消費量を減らそうという流れも生まれてはいるものの、人口増加に伴い畜産業の成長は著しいものです。
食肉産業と密接な関わりを持つレザー産業。
実際にレザーは、「原皮」として流動性のある価格で市場で取引されているので、レザーを消費することは、結果「畜産業」を後押ししてしまうことに繋がっているんです。
畜産業 = 地球温暖化を促進してしまうという懸念を抱く消費者も今後増えてくることでしょう。
加えて、現在のレザー加工において一般的なクロムなめしには、多量の水と化学薬品を使用するため、それによる環境負荷や有害物質による環境汚染も問題視されています。
その一方、動物性レザーの代替として挙げられる一般的なヴィーガンレザー(合成皮革)にも、製品寿命がと比べると短く原料に石油系樹脂を用いているという環境へのデメリットがあるのも事実です。より長く使えると言われている動物性のレザーの方が、環境により優しいのではないかという意見もあり、環境にとってどちらが優しいく正しいとされる答えは見方によるところもあるかもしれません。しかし、問題の根源である畜産業は私たちが今後も向き合っていくべき一番の課題ではないでしょうか。
動物倫理
牛革は若ければ若いほど高価に取引されています。皮をとる牛の年齢やオス・メスの違いなどにより様々な呼び名があり、それぞれの持つ性質も異なります。レザー表面の風合いが異なることで、価格に大きな違いが生まれます。
カーフスキンと呼ばれるレザーは、生後6ヶ月以内の子牛の革です。
レザー産業からすると、牛革の中でもっとも上質な素材であり世界の名だたるハイブランドでも使用され、高価格で取り引きされていますが、牛の健康な赤ちゃんを屠殺してまで、使いたいものでしょうか疑問が残ります。
「どうしていけないのレザー?」まとめ
ここまで「どうしていけないのレザー」という観点で、レザー産業の現状を整理し理解を深めてきました。これからの食肉産業の状況や私たちの選択によってレザー産業にも新たな変化が現れてくることでしょう。
そして、一消費者として自分のライフスタイルや信念に合わせて愛着を持って使用できる製品を選ぶよう意識できると良いですね。
【参照サイト】
・日本化学繊維協会
・JLIA 一般社団法人日本皮革産業連合
【参照記事】
・ABOUT LEATHER|一般社団法人日本タンナーズ協会
・人工皮革と合成皮革|東京都クリーニング生活衛生同業組合
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