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Column.ヴィーガンファッション講座「どうしていけないのダウン?」

目次

冬場の防寒に欠かせないアイテムとして私たちの生活に広く浸透しているダウンジャケットや羽毛布団。その原料であるダウンがどのように生産されているか、考えたことはありますか?
私たちの生活を豊かにしてくれるダウン素材の特徴と、その背景にある動物倫理の課題について一緒に考えてみましょう。

 

ダウン(羽毛)とは?

ダウンとは水鳥の胸毛を指し、「羽毛」としても知られています。ダウンを採集できる水鳥には、グース(ガチョウ類)とダック(アヒル類)の2種類があります。
一羽の水鳥からはおよそ10〜20グラムのダウンが採集されますが、掛け布団一枚に使用するダウンの量を1000グラム前後とすると、ダウン製品の製造にはとてもたくさんの水鳥を必要とすることがわかります。
ダウンはもともと、換羽期(水鳥の羽が自然に抜け代わる時期)に抜け落ちた羽を拾い集める方法で採集されていたため、かつてはとても貴重で高価な素材として知られていました。

ダウンとフェザーは何が違うの?

ダウンと似た素材にはフェザーがありますが、それらは何が違うのでしょうか。
ダウンが水鳥の胸元から採れる毛である一方、フェザーは水鳥の胸元以外の場所から採れる毛を指します。ダウンには芯がないため手触りがとてもフワフワとしているのですが、フェザーには芯があり、私たちが「羽」と聞いてイメージするような形をしています。
例えばダウンジャケットでは、ダウンとフェザーを一定の割合で混ぜて使用します。これにより、ダウンの持つ高い保温性とフェザーの持つ弾力性で、暖かく形崩れのしにくい、質の良い防寒具になるのです。
なお、ニワトリのような陸鳥の胸にはダウンがなく、陸鳥から採集できるのはフェザーのみです。

ダウンの生産方法

前述の通り、水鳥から採集できるダウンの量には限りがあるのですが、どのようにして需要を満たすだけのダウン製品が生産されているのでしょうか。
羊の毛からウールを採集する際はバリカンなどを使って羊の体から毛を刈り取るようにして採集しますよね。しかし、ダウンは水鳥の胸元から毛そのものをむしりとるようにして採集します。このむしりとる工程を「プラッキング」と呼びます。
プラッキングにはいくつかの方法があり、死んだ水鳥から機械を使ってダウンをむしりとる方法や、死んだ水鳥から人の手でダウンをむしりとる方法が挙げられます。

 

ダウン製造における課題の一つ、ライブプラッキングって何?

ここで動物倫理の観点から問題視されているのが、生きた水鳥からダウンをむしりとる「ライブプラッキング(Live Plucking)」という方法です。
生きた水鳥からダウンを採集する場合、ダウンは一度むしりとられても6週間前後で再度生え揃うと言われています。そのため一羽の水鳥から繰り返しダウンを採集することができ、効率的なダウンの生産が可能となります。
ライブプラッキングの工程では、水鳥の胸元から無理やり毛をむしりとったり、胸元の傷口を麻酔なく縫いつけたりといった、倫理的ではない方法が取られているという報道もあります。そのため、この生産方法には否定的な声を挙げる人が多くいるのです。
それを聞くと、ライブプラッキングではない方法で生産されたダウン製品を購入したいと考える人もいるでしょう。しかし、現状のサプライチェーン(製造システム)では、ダウンがどこでどのような方法で採集されたものなのかを追跡することはほぼ不可能とされています。つまり、私たち消費者は自分が使用しているダウンアイテムがライブプラッキングを通して製造されたかどうかを知ることができないのです。

しかし、このライブプラッキング問題に取り組み、100%アニマルフリーを宣言しているブランドがあります。ブランド名は「SAVE THE DUCK」。ブランド名からもアヒルを救いたい姿勢を伺うことができます。SAVE THE DUCKでは従来のポリエステエル繊維よりも軽量化や速乾性に優れた「PLUMTECH®」というポリエステエル繊維を使用してダウンを製造しています。また、ペッドボトルなどのリサイクル素材を使用して作られた「RECYCLED PLUMTECH®」という繊維を使用したシリーズも用意されており、動物だけでなく環境全体にも配慮されています。

ダウン製造における課題の一つ、ライブプラッキングって何?
SAVE THE DUCKのダウンで形作られたアヒル(SAVE THE DUCK公式サイトより)

動物にも環境にもアプローチするリサイクルダウン

水鳥のダウンを使用することへの反対意見を受けて、動物由来の繊維ではなく人工的な化学繊維を用いたダウンも生産されるようになりました。しかし、化学繊維のダウンは温暖化の原因にもなっている石油を必要としていたり、大量の水が必要であったりと、環境の面で多くの課題を抱えています。
そこで、近年注目されているのが「リサイクルダウン」です。
リサイクルダウンは、使用済みの製品からダウンを取り出して再利用し、新しい製品に生まれ変わらせたものです。動物由来のダウンであっても、化学繊維のダウンであっても、リサイクルダウンの製造には一次資源(新しい原料)を必要としないため、これ以上動物にも環境にも大きな負担を与えないという観点から、より価値の高い方法であると言えます。最近では大手アパレルブランドでも、使用済みダウン製品の回収とリサイクルに取り組みはじめています。

 

植物由来の素材から生まれるダウンジャケット

リサイクルダウンの他にも、動物倫理の課題の根幹へアプローチする選択肢として代替素材を使用したダウンへの注目も高まっています。例えば、花びらから生まれた生分解性素材(微生物の働きによって土に還る素材)を使用したPANGAIAのFLWRDWN™や、カポックという木の実から採れる繊維を活用したカポックノットなど、植物由来の原料から製造されるダウンが登場しています。

植物由来の素材から生まれるダウンジャケット
カポックノットのダウンコート(KAPOK KNOT プレスリリースより)

まとめ

ダウンを取り巻く課題には、不透明なサプライチェーンをはじめ解決の兆しが見えていない部分がある一方、リサイクルダウンや植物由来のダウンといった代替素材の開発による解決策も次々と生み出されています。
消費者として、私たち一人ひとりが課題意識を持って主体的に製品を選んでいくことで、製造の仕組み全体を変えていくことができるかもしれません。問題から目を背けることなく、みんなで取り組んでいきたいですね。

肌触りがよく軽やかで温かみのあるシルク。その上品な光沢から、古代中国では皇帝や国王への献上品として大変貴重な素材として扱われたといいます。現代でも、シルク製の衣類はその吸湿性と放湿性の高さから人気を集めています。

しかしながら、シルクを製造する際に欠かせない蚕の飼育における倫理的な課題には、批判的な見方もあることをご存知ですか?美しいシルクの歴史とその製造工程について学び、シルクを取り巻く課題について考えてみましょう。

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  • RINA | ライター

    アメリカ在住経験を活かし、サステナブルな情報を日本から世界へ発信中。ソーシャルグッドなアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」、サーキュラーエコノミー推進プラットフォーム「Circular Yokohama」運営メンバー。趣味はカフェ巡り。